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アート21教室日記
田屋優・・・・・・画家、現代美術作家  西船橋の絵画教室、研究所主宰               (掲載内容の無断転用禁止)
プロフィール

田屋優

Author:田屋優
「絵の多角的分析」を研究テーマに、様々な角度から見た絵の本質を分析解説する。
  画家・彫刻家、田谷映周を師匠とし、兄弟弟子に画家・彫刻家、田谷安都子。 自身の弟子に橋崎弘昭、大野まみ、萩原正子。
 
「西船絵画教室アート21
 アート21研究所」
http://www.art21japan.jp/

 南船橋ビビットスクエア・カルチャースクール絵画部講師、ウエルピア市川絵画部講師、カーサ・デ・かんぽ浦安絵画部講師、NONSTOP会員。
  

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<教室日記>2014・3・25(火)
「グログ講義」
(制作の二重構造)アーカイブー2007年12月6日のブログより

  秋の展覧会の作品ネタがまだ決まらない。 何を描きたいのかは、はっきりしているが、具体的に、では何を描くかということになると、迷いに迷う。 

  写真を参考に描くので、いい写真が見つからないということ。 いい写真は、ネットで検索すれば、いくらでも出てくる。 
  しかし、著作権付き。 練習するのにはいいが、発表はできない。 
いい写真を安く売ってくれる写真家がいないものだろうか。 

  教室休みの先週の月曜、船橋までチャリで出掛けた。 
いつもは、味一のラーメンを食べに行くことしか行く用事がないが、この日は、写真を撮りに行った。 
  船橋には、いい雰囲気の路地がある。 その中に、昔ながらのウナギ屋さんがあり、表に向かってウナギを焼いている。 
  店の中は、いかにも老舗という感じで、板壁がすすけてドス黒く、これがまたいい感じを出している。 

  その店と路地の雰囲気を写真に撮ろうと出掛けてみたが、久しぶりに行ってみたら、そのウナギ屋さんが無くなっていた。 
  
  マイッた! 予定が狂った。 ご時勢なのか、古いものがドンドン無くなっていく。

なんか、ウナギ屋さんのない路地に白けてしまい、そのまま、路地を通り過ぎ、船橋大神宮のほうへ向かったが、アテはない。 
  今更、景色を探し歩いても時間の無駄だろう。 いい景色は、日頃からネタ持ちしていないと、見つかるものではない。 展覧会出品用の景色探しなので、なおさらのこと。
  このまま帰るのもシャクだな、と、思っていた時、 ふと、思いついた。 

「そうだ! 船の写真を撮ろう」

  船橋駅前を真っ直ぐ南に向うと、しばらくして、日の出桟橋に出る。 水揚げの終わった漁船が桟橋に横付けされている。 以前行ったことがある。 東京湾の入り口だ。 あれは、題材になるかも。 
  午後3時を過ぎてしまったので、ゆっくりできない。 チャリをこぐ足に力が入る。 

京葉道路のガードをくぐった時、右に曲がると、ボートなど小さな船の溜まり場があることを思い出した。
  予定変更。 溜まり場に向う。 時間がないので、近いほうに向った。

とりあえず、片っ端から写真に撮ろうと、シャッターを切る。 陽がだいぶ傾き、光が夕刻の色に変化してきた。 
  初めは、橋の上から撮っていたが、橋の下が覗ける位置まで階段を下りた。 そこが、コンクリートの船寄せ場。 
  目の前に停泊中の船がある。  


しかし、この船は、いったい何だろうと思った。 一見、クルージング用の船に見える。 少し大きめ。 
  桟橋みたいに、足場が組まれているが、船までは、ちょっと距離があり、途中でちょっとしたスペースを作っており、そこから、船までは、細い橋が渡してある。

  そう思って、眺めていて、気がついた。 

「お店だ!」

  意外な所で意外なものに出会った。 見れば見るほどお店だった。 ひと気がないので、休業日かもしれない。 
  桟橋の途中のスペースには、木製のベンチがいくつも置いてあり、濃いブルーのパラソルが二つ、折りたたんであった。 これは、ワインなどが出てきそうな、水上パブだ。 

  船橋は港町。 水上パブがあっても不思議はないが、周りは、お店らしいお店のない結構殺風景な場所。 
  そこに、小ジャレタパブがあったら驚く。 しかも、自宅から自転車で来れる。

「あら、まあー!」



水上パブ縮小

「デイープブルー・ラム酒専門店・船橋市港町」

 
  結局、そのあと、あれこれ、色々な船の写真を撮って帰ったのだが、何となくいい気分だった。 ちょっと行ってみたいお店を発見。 得した気分だった。
  もうちょっと暖かくなったら、あそこで、夜景を眺めながら、一杯やったら旨いだろう。 
  そんなことを考えながら帰った。  
 


さて、ブログ講義である。 

  今回の話は、「制作の二重構造」。 2007年12月6日のブログからの抜粋だが、時点の違いから、現在形を過去形に直してある。 また、編集もしてあるので、ご了承を。


  以前、わが教室に、水彩画を描いていたSさんがいた。 70代半ばにして体調を崩し、退会したが、大人コースの中でも、Sさんの水彩画は、人気があった。
  会員展の作品を見て、Sさんみたいな水彩画を描きたいと言って、教室に入会して来た人が、実際にいたほどである。

  Sさんは、旅行好きだった。 特に海外によく出掛ける。 世界各国に出掛け、スケッチをしていた。
  旅先でのスケッチは、ツアーのため、時間がなく早描きになる、とSさんは言っていた。
   
  本人の言うとおり、Sさんのスケッチは、短時間に描かれた、活きの良い絵である。 
  いかにも、水彩といった感じで、ポイントを抑えて、サラッと描いたところが、人気の所以であろう。

  Sさんの絵を好む人は、Sさんの真似がしたいという。 その気持ちは、分からないでもないが、どう、真似るかが、問題だ。
  Sさんのスケッチを、そのまま真似ても、Sさんの絵のようにはならない。 なぜなら、実は、Sさんの制作は、二重構造になっているからである。

  二重構造の制作は、絵の世界では、珍しくない。 結構、当たり前。 人間の制作的欲求を利用した
  昔からある制作方法である。



Sさんは、西船教室が誕生した年に入会した古参の会員だった。 10年前。 5階の北側にあった旧教室が最初。 
  当初は、モチーフを並べて描いたりしていたが、教室にモチーフが少なく、すぐに底をついた。 
  そのため、描くものに困り、ある日、窓から見える景色を描き出した。 

旧教室には、北側と西側に窓があり、角度を変えて、何度も描いていた。 火曜教室の午後に来ていたが、当時は、生徒さんが少なく、火曜日は、ほとんどSさんだけだったので、自由に場所取りできた。

  だいたい、6回から8回ぐらいで、一作を仕上げていた。 週一なので、1ケ月半から2ケ月掛かる。 
  それが、次第に3ケ月、4ケ月と伸びて行った。 
それも、順番に仕上げて完成というやり方ではなく、同じ所を何度も直しながらの描き方だった。

  水彩画で、同じ所を何度も塗ったり、水をつけた筆で絵具を拭き取ったりすると、明度・彩度ともに落ち、仕上がった時は、お世辞にも綺麗とは言えない。

  作品発表会では、その作品を出品していたが、絵はクスんで汚かった。 

作品を作っているというより、練習していると言ったほうが、早い。 
  この普段の制作で、Sさんは、色の出し方、調整の仕方、構図、描写など、様々なことを勉強し、経験して、肥やしとしていた。 
  そうしようとしたのではなく、上手く描けなかったので、自然にそうなった。

ある日、旅先でのスケッチを見せてくれた。 驚いた。 絵が生き生きとしていた。 
  早描きのため、輪郭線などは、荒々しく1本で、サッと描いてある。 それが、またいい感じだった。
  普段の制作では、複雑な風景を、時間をかけて制作しているので、旅先でのスケッチは、時間が限られることもあり、自然と早描きになった。 
  普段の制作で得たものが、この時、一気に画面に出る。 

翌年の発表会では、このスケッチを出品し、評判になった。 普段教室で描いている作品も、この時に一緒に発表したが、その違いに、皆、戸惑った。 

  さらに、翌年は、スケッチだけを発表し、教室で描いている作品は、出品しなくなった。 
  Sさんの制作スタイルが、この頃から、はっきりしてきた。 自信を持ったようである。 
  そして、また、自分が何をやっているのか、分かってきたのだろう。 
だから、教室での制作は、画面が汚くなっても、気にせず、直し続けた。
  Sさんは、制作を二重構造にした。 


  一つの制作を生かすために、二つ目の制作で勉強する。 勉強ばかりでは飽きるし、ちゃんと描きたい欲求に駆られる。 そこでその欲求を一気に吐き出すと、一つ目の作品が伸び伸びする。

  もし、旅先でのスケッチのような、早描きばかりをしていたら、絵は次第に荒れ、雑になり、しまいには、行き詰まってしまうだろう。

  制作の二重構造は、理に適った制作方法である。

早描きした絵を描きたかったら、遅描きとセットにすべし。 
  今回、このことを覚えよう。
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テーマ:アート - ジャンル:学問・文化・芸術

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