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アート21教室日記
田屋優・・・・・・画家、現代美術作家  西船橋の絵画教室、研究所主宰               (掲載内容の無断転用禁止)
プロフィール

田屋優

Author:田屋優
「絵の多角的分析」を研究テーマに、様々な角度から見た絵の本質を分析解説する。
  画家・彫刻家、田谷映周を師匠とし、兄弟弟子に画家・彫刻家、田谷安都子。 自身の弟子に橋崎弘昭、大野まみ、萩原正子。
 
「西船絵画教室アート21
 アート21研究所」
http://www.art21japan.jp/

 南船橋ビビットスクエア・カルチャースクール絵画部講師、ウエルピア市川絵画部講師、カーサ・デ・かんぽ浦安絵画部講師、NONSTOP会員。
  

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<教室日記>2013・2・19(火)
ネット水彩画テキスト3模写見本画・シクラメン

通信講座水彩画見本

<教室日記>
(Mちゃんのこと)

  中学3年生の女の子、Mちゃんは、土曜午後1時からのキッズ教室に来ている。 
4人兄弟の長女。 教室のあるマンションの裏手すぐ近くの結構大きな一戸建に住んでいて、小学1年生の時に、お父さんと二人で訪れた。 

  Mちゃんが、小学3年生の時は、火曜教室にいて、同じMの付く2年生のMaちゃんと来ていた。 
  ある時、この二人がわがままを言った。 予定したことをしたくないと言い出す。 絶対に嫌と、駄々をこねた。 何をするはずだったかは、すでに忘れたが、私が腹を立てたことは、よく覚えている。

  来週は、何々をするからね、と釘を刺したのに、嫌がった。 その時の思いつきで、嫌だと言っていることは、明白。 私は、机を叩いて怒った。 教室では、しょちゅう怒っているが、本気で怒るのは、珍しい。 この時ばかりは、切れてしまった。

  普通、このくらい怒ると、女の子はたいてい辞める。 私も、二人は辞めると思っていた。 しかし、なぜか、二人は辞めなかった。 そのうち、Maちゃんは、3年生になり、江戸川区に引っ越したため教室を辞めた。 Mちゃんは、仲良しがいなくなり、土曜教室に移った。 4年生になっていた。 
  Mちゃんが、6年生になった時、中学生になったら辞めると言い出した。 

4年以上在籍している子供が辞める時には、3色ボールペンとか、記念品をあげることにしている。 よく続きましたねのご褒美のつもりがある。 Mちゃんは、1年生から6年生までの通しなので、記念品ももう少し良くなる。 まして、中学生になっても残る場合は、中学生になった時点で、記念品を2個あげていると言った。 そのためか分からないが、中学生になっても通うことになった。 
  しかし、中学1年の7月になった時、辞めると、また言い出した。 

「先生! たぶん、来月で辞める」

  Mちゃんは、十分に教室に通ったので、辞めるタイミングを探していたのかもしれない。 私も、十分に通ったねと言いたかった。 だが、この時は、タイミングが悪かった。
 
  ちょうど、その頃、Mちゃんと同じ土曜の時間帯に来ていた5年生のAちゃんの元気がなかった。 漢字は違うが、同じ呼び名のもう一人のAちゃんが、中学受験で塾に通うことになり、5月一杯で辞めたためである。 とても、仲が良かった。 それで、何となく寂しそうにしていた。 
  Mちゃんは、8月一杯で辞めると言っている。 6月、7月と過ぎて、8月にMちゃんが、辞めたのでは、Aちゃんがショックを受ける。 Aちゃんは、皆と話をするが、今は、唯一Mちゃんとだけ、心を許して話をしていた。

  Mちゃんが、辞めると言った翌週、Aちゃんが、土曜日の教室をお休みした。 それで、私は、Mちゃんに頼みごとをした。 

「辞めることを皆に言わないで、黙って辞めてくれないか?」

「どうして?」

「だって、今度は、Mちゃんが辞めると分かったら、Aちゃんが可哀相で見てられない」

  私は、Mちゃんが辞めたら、しばらくウヤムヤにするつもりだった。 Mちゃんがいないことに慣れてから、話そうと考えた。  
  私に頼まれたためか、Mちゃんは、その日、静かだった。 いつもは、学校のことや、友達のことをしゃべり通しなのに、静かにしていた。 何か考え事をしているようにも見えた。
  帰る頃になって、Mちゃんが言った。 

「先生! 私、やっぱり辞めない」

  そう、言った。 

それは、Aちゃんを可哀相と思ったので、そう考えたのかは分からない。 Mちゃんは、その後、そのことには、何も触れなかったので、未だに分からないが、ただ、この時に、辞めるタイミングを完全に逃したのは、確かである。 

  Aちゃんは、やはり中学受験のため翌年の3月に辞めたが、Mちゃんは、残った。
  母親からは、「何も続かないのだから、せめて、絵画教室は続けなさい」 と、言われている。 

「おかーさんがね、私の結婚式に先生を招待したらって、言ってんのよ」

  ある日、そう言われた。 大笑いした。

「Mちゃん! 結婚するまで、教室に来るつもり?」

「そうなるかも」

  それは、冗談だとしても、すでに中学3年になっていた。 それだけ、長く教室にいると辞めるためには、ある程度の理由が必要。 理由が浮かばないと、何となく教室に来てしまう。 毎週の習慣だから。  すでに、高校に入ることが、辞めるキッカケにはならないと、Mちゃんは、考えたのかもしれない。 高校生になっても、教室に来ると言っている。
  中学入学の時に、砕けて、そのあとまた砕けた。 他にやることがあれば、いいのだが、辞めても家でブラブラするだけのよう。 それでは、決心がつかない。 今では、辞めるタイミングを逃がしてしまったと、よく口にする。

  時々、Mちゃんは、ポツリと言う。

「私、一体いつまで教室に来るんだろう?」 
 
  2月に高校受験があった。 受験シーズンになってもMちゃんは、教室に来ている。

「私ねー、入れる高校に入れればいいんだけど、でも、先生!」
「第一志望の発表が2月19日の火曜日にあるから、もし、落ちたら23日の土曜日は休むからね」
「何もする気がしないから」

  そう言って、Mちゃんは、帰って行った。

「分かってるよ」

  と、帰る背中に返事した。
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テーマ:アート - ジャンル:学問・文化・芸術

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