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プロフィール |
Author:田屋優
「絵の多角的分析」を研究テーマに、様々な角度から見た絵の本質を分析解説する。 画家・彫刻家、田谷映周を師匠とし、兄弟弟子に画家・彫刻家、田谷安都子。 自身の弟子に橋崎弘昭、大野まみ、萩原正子。 「西船絵画教室アート21 アート21研究所」 http://www.art21japan.jp/
南船橋ビビットスクエア・カルチャースクール絵画部講師、ウエルピア市川絵画部講師、カーサ・デ・かんぽ浦安絵画部講師、NONSTOP会員。
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救急病院の夜 <エピソード> ‘08/9/20(土) |
学生時代、救急病院で夜勤のバイトをしていたことがある。
ガードマンである。 一階の正面玄関を突き抜けると裏口に出る。裏口の手前に左右に扉があり、左がガードマンの当直部屋で、右が遺体安置所である。 時々、ここにご遺体がある。ガードマンは見回りが仕事なので、ここもチェックに入らないといけない。気持ちの良いものではない。
午後8時の一般診療を終えると、以後は救急である。起きているうちは良いが、寝ているところを起こされることは、救急病院の宿命である。 まず、外線はガードマンの当直部屋に入る。夜中はほとんどが救急隊からである。つまり、救急車。
当直看護士に内線で知らせ、当直医師を起こす。戸締りはガードマンの仕事なので、診療の間、起きてないとならない。
ある時、救急隊が自殺未遂の中年の男を運び込んだ。本人が歩いて救急車から降りたので、大したことはないと思ったが、真っ赤に染まった手首に巻かれた布を、取り除いた看護士が、「ウワッ!」と声を上げた。
覗き込むと、手首を包丁で何度も切りつけた痕が、生々しかった。男の顔は無表情。
ガードマンは、就寝前に、館内を一通り見回る。 階段を上り詰めた、屋上に出るドアが施錠されているかは、大事なチェックである。 ある日、このドアの前に入院患者がうずくまっていた。若い女性である。ライトに照らし出された怯えるような顔が怖い。
あとで、看護士に聞いたところによると、恋愛問題で自殺未遂をしたらしい。屋上のドアが開いていたら、屋上から身を投げるつもりだったのだろう。正常な神経ではない。 しかし、事件はこれで終わらなかった。
この患者さんが、翌朝4階の窓から飛び降りたのである。
4階の4人部屋に朝の配膳があった。皆、配膳に気をとられている隙に窓から飛び降りた。 落ちた所が、裏口のドアの前である。つまり、私の寝ているすぐ近くに落ちた。 ドスンという音で目を覚ました。4階の窓から覗き込んだ他の患者さんが悲鳴を上げている。
慌てて、ドアのところに行くと、うめき声を上げている。外傷は大したことはない。看護士に手伝って治療室に運び込んだ。今度も失敗したと思ったのか、何か叫びながら暴れる。皆で押さえつけた。時折、吐くような仕草をする。
結局この患者さんは、全身打撲でその日の夕刻亡くなった。頭を強く打って、内出血を起こすと吐き気がする。私もそのことは、知っていた。だから亡くなったと聞いても、驚かなかった。やはり、と思った。
真夜中に運び込まれた赤ん坊の顔の色が、土色だったこともある。0才である。人工呼吸をするために、私は足を押さえる役目だった。医師が何度も、心拍を復活させようとした。何度も何度も。 医師が、廊下で待っていた母親に死亡を伝えると、その泣き声は真夜中の病院館内に響き渡った。
医師は、小児科で、その子は患者だったらしい。急な容態の変化に医師もうろたえた。 午前3時頃、何となく集まった診療室横の1階事務所で、当直医師と看護士二人、そして、23才の私。皆、座り込み誰もが沈黙した。
「嫌なもんだな」と医師がポツリというと、それを合図に皆解散した。
それから、何十年が過ぎた。その間、私も色々なことを経験し、苦しみ、楽しんできた。 何十年の月日は、23才の若者を大人にした。 運悪く亡くなった者は仕方ない。しかし、自らの命を縮める者はどうか。 今も昔も、若者は死に急ぐが、人生は神様からの贈り物である。苦しいこともあるが、それに勝る喜びもある。人生は生きることに意味がある。生き抜くことに意味がある。
いずれ皆に、死は訪れる。だから、どう生きたかが重要である。今の私は、そのことを実感している。 死に急いだ者に、そのことを伝えたかった。
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