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プロフィール |
Author:田屋優
「絵の多角的分析」を研究テーマに、様々な角度から見た絵の本質を分析解説する。 画家・彫刻家、田谷映周を師匠とし、兄弟弟子に画家・彫刻家、田谷安都子。 自身の弟子に橋崎弘昭、大野まみ、萩原正子。 「西船絵画教室アート21 アート21研究所」 http://www.art21japan.jp/
南船橋ビビットスクエア・カルチャースクール絵画部講師、ウエルピア市川絵画部講師、カーサ・デ・かんぽ浦安絵画部講師、NONSTOP会員。
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市川から来た天才の過ち <エピソード> ‘08/8/9(土) |
昨年の7月に「市川から来た天才」という話を書いた。
読んでない人のために、大まかな内容を書くとする。 もうかれこれ十数年前のエピソードであるが、千葉県の市川市から19才の若者が当時の杉並の教室に尋ねて来たことがある。 事前の電話で、彼が抽象画を描いていること、自分が気違い(本人が言ったことなので、オリジナルテイーを尊重して以後この言葉を使うので、ご勘弁願いたい)のような絵を描いていることなどを知り、興味を持ったが、普通の絵だったというオチがつく。 短い文章であったので、どう普通だったかを書いてない。それで、今回補足説明をしようと思う。
そもそも、最初の電話で彼が言っていたことであるが、親や友達に気違いのような絵だと言われたらしい。絵を描いて、気違いのようだと言われると、「天才かも!?」と、なちゃう年代である。
まあ、そう考えたのだろう。私の所に電話して来たのは、抽象画を教えてほしいということであったが、同時に私を驚かそうという魂胆もあったと思う。 「僕の絵を見て、驚かないで下さい」と自信気に言っていた。
結局、私は驚いたのであるが、彼の絵ではなくて、本人にである。普通の絵を持って来て、「天才」と思い込んだ純真さに驚いた。
なんでも、市川の絵画教室に行ったが、そこの先生に「僕には、君は教えられない」と言われて、ますます天才になっていったようだ。 こういう天才は、可哀想だが、絵画教室では相手にされない。市川の先生も体よく断ったわけである。 もちろん、私も断った。 「今の君には、教えられない。二年したら又来なさい」と言った。始め一年と言って、すぐ二年と言い直した。二年あれば、21才になる。21才になれば、大抵の人間なら、自分が何者か気が付く。 彼に何を言っても無駄である。なにしろ、肩で風を切って歩いている。
絵を見て思ったのだが、抽象画を習いたいのは、まんざら冗談でもないらしい。すでに、絵が行き詰っていた。何点も持ってきていたが、展開が出来なくなってきていたのである。 だから、習おうと思ったのであろうが、高慢ちきな者に教えるほど、こちらも暇ではない。 何しろ頭の中は「天才」の二文字が渦巻いている。
さて、話を絵に戻そう。
絵の世界で、気違いのような絵は、最難解テーマである。だから、これをクリア出来れば、確かに「天才かも!?」になる。
彼の絵は、鉛筆だったか、ボールペンだったか忘れたが、グチャグチャに描かれていた。 技術が発展途上の若者が、エネルギーに任せて最初にやることである。だから、絵としては、珍しいものではないが、成功したら、前代未聞になる。 「感じを出す」のは、極めて難しい。
もし、気違いのような絵がテーマなら、本当に気違いのように描かないとならない。普通の人間には、そこが難しいのである。
失敗している点は、描きながら頭の中を「無」の状態にしていない所であった。つまり、エネルギーに任せて描いてはいるが、微妙な所で、絵を調整しながら描いているのである。気違いはそういうことをしない。
例えば、紙の端まで勢いで描いて来て、端に来たので真ん中の方に折り返すなどである。 これが、おかしい。これでは、普通の絵になってしまう。
感情はほとばしりである。感情に紙の端は関係ない。そのまま突き進むべきなのである。テーブルを汚したってしょうがない。そのぐらいして、やっと少しだけ、感情が絵に乗るのである。 折り返した時点で、彼の運命は決まった。普通の人間の普通の絵になってしまった。
気違いではなく、勘違いであった。
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