以前のことである。土曜日の子供の時間を、見学したいと、電話があった。
中学一年生の女の子、○○ちゃんが泣き出したのは、丁度、その見学者が来る頃であった。
最近入った○○ちゃんは、中学一年生であるが、子供に混じって来ていた。初めてのパステルに挑んでる。簡単なりんごとか、オレンジの練習画を経て、パステルに慣れたところで、いよいよ、作品の模写をすることになった。
しばらくして、○○ちゃんが何もしていないことに、気が付いた。絵は描きかけである。訳を聞いても、答えない。そのうち、涙を流し始めた。やっと訳を聞きだしたことによると、自分のヘタさに、ショックを受けたらしい。
「なーんだ」と思った。まだ、幼稚なところが、あるんだな、と思った。
私は、なだめることにした。「もう一度、簡単なものから、始めよう」と言ったが、返事がない。それでは、本人、気が済まないらしい。
そんな時、教室見学者がやって来た。小学一年生ぐらいの女の子を連れて、母親が入って来た。私は、とりあえず、また、パステルを練習するように、○○ちゃんに言って聞かせ、見学者の応対にまわった。
母親に教室の説明をしてると、その母親の目が、○○ちゃんの方に、チラチラと動く。私は背を向けていたので、○○ちゃんが何をやっているのか、見てない。それで、振り返った。
○○ちゃんは二人掛けの作業机の壁側に座っている。その壁に向かって、まだ泣いていたのである。押し殺したような嫌な泣き方である。他に女の子の生徒が3人。いつも、うるさく騒ぐのに、皆、黙ったまま、作業している。 シーンとしている。時折、すすり泣く音がする。まるで、お通夜の席である。
これはいかんと、思うわけである。見学者の母親に、タイムを申し入れ、○○ちゃんを再びなだめることにした。「すぐに、上手くなるわけではないよ。」「練習しよう」
○○ちゃん、今度は体を揺すって、イヤイヤをする。どうみても、私が泣かしたような状況になってきた。
見学者の親子は、一通り説明を聞くと帰って行った。 ○○ちゃんも泣き止んでいた。
気が晴れたのであろう、サッパリした顔をして、帰って行った。
もちろん、見学者からは、その後の連絡はない。
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