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アート21教室日記
田屋優・・・・・・画家、現代美術作家  西船橋の絵画教室、研究所主宰               (掲載内容の無断転用禁止)
プロフィール

田屋優

Author:田屋優
「絵の多角的分析」を研究テーマに、様々な角度から見た絵の本質を分析解説する。
  画家・彫刻家、田谷映周を師匠とし、兄弟弟子に画家・彫刻家、田谷安都子。 自身の弟子に橋崎弘昭、大野まみ、萩原正子。
 
「西船絵画教室アート21
 アート21研究所」
http://www.art21japan.jp/

 南船橋ビビットスクエア・カルチャースクール絵画部講師、ウエルピア市川絵画部講師、カーサ・デ・かんぽ浦安絵画部講師、NONSTOP会員。
  

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制作の二重構造  <研究所レベル>
   わが教室に、水彩画を描いているSさんがいる。先日の、西船アートギャラリーでの「大人コース教室展」でも、人気があった。
   Sさんみたいに、水彩画を描きたいといって、教室に入会してきた人が、実際にいたほどである。

   世界各国に出かけ、スケッチをしている。
Sさん曰く、「旅先でのスケッチは、時間がなく早描きになる」
   本人の言うとおり、Sさんのスケッチは、短時間に描かれた、活きの良い絵である。いかにも、水彩であり、ポイントを抑えて、サラッと描いたところが、人気の所以であろう。

   Sさんの絵を好む人は、Sさんの真似がしたいという。その気持ちは、分からないでもないが、どお、真似るかが、問題となる。
   Sさんのスケッチを、そのまま真似ても、Sさんの絵のようにはならない。どういうことかと言えば、Sさんの制作は、二重構造になっているからである。

   これからの話は、「制作の二重構造」という話で、絵の世界では、極、当たり前のことである。人間の制作的欲求を利用した制作方法である。

   普段の、Sさんは、教室の窓から見える風景を描いている。大体、四回から六回ぐらいで、一作を仕上げる。授業時間は、一回三時間なので、一作に、十二時間から十八時間掛かる。以前描いた絵は、三ヶ月ぐらい掛かったこともあるので、時間にして、三十六時間になる。

   水彩画で、三ヶ月ぐらい掛けると、同じ所を何度も、塗ったり、水で絵具を取ったりするので、明度は落ちるし、仕上がった時は、ある意味、継ぎはぎだらけの、様相となる。

   これが、Sさんの一つ目の制作である。作品を作るというより、いまのところ、練習画といった方が、適当であろう。この、普段の制作で、様々なことを、勉強し、経験して、肥やしとしている。

   複雑な風景を、時間をかけて制作しているので、二つ目の制作となる旅先でのスケッチは、自然と早描きになる。一つ目の制作で得たものが、この時、一気に画面に出る。
   絵が生き生きする。これが、「制作の二重構造」である。

   もし、旅先でのスケッチのような、早描きばかりをしていると、絵は次第に痩せ、荒くなり、しまいには、行きづまることになる。

   もうひとつ、別な話をしよう。
私が十代の頃、トミー・アンゲラーというイラストレーターがアメリカにいた。彼は、Gペンで、線一本の世界を展開していた。もともとは、絵本作家として活躍していたが、友人が、彼のアトリエを訪れた際に見せられた、スケッチブックを見て、驚嘆した。

   人間のダーク面を、描き殴ったような鋭い線で、この上なく辛らつに表現していた。この、スケッチブックは、そのままの形で、出版され、「アンダーグランド・スケッチブック」と名付けられ、彼の名を世界的に有名にした。
   世の中を、風刺したり、エログロナンセンスを表現する場を、「アングラ」と、かって、表現したが、この「アンダーグランド・スケッチブック」に由来している。

   60年代後半から70年代に亘り、日本の漫画家、イラストレーターが、こぞって、トミー・アンゲラーの影響を受けた。影響というより、亜流といった方がいいかもしれない。真似をするのだが、どうも上手く描けない。彼のような、伸び伸びとした線、描き殴る荒々しい筆致は、誰として、真似が出来なかった。

   私も、真似をした、一人であるが、その後、彼のアトリエを訪れた日本人の記事を読んで、驚いた。その記事によると、トミー・アンゲラーは、普段は、細密画を描いているということ。山のように描いていたらしい。私は、それで、合点した。

   山のような細密画は、単純な線の世界を描いているから、描きたくなったのか、細密画を描いているから、単純な線の世界を描きたくなったのか、どっちが、先かは、分からないが、非常に合理的な方法であることに変わりはない。
   片方で、煮詰まって来た時、もう片方に、例えば、単純な線を描いたとなれば、線が伸びやかになるのは、道理である。

   これでは、真似しても上手くいかない。制作が二重構造になっているからである。
このように、二つの正反対の制作を往復することにより、それぞれの、作品純度を保つ方法があるということを、覚えておいてほしい。

   なぜなら、二つの正反対の制作を往復すること。それによって得られる効果を利用すること、これが、プロのやり方であるから。

   一方向で、自らの意思によって、頑張るのが、プロと思っている人が、いるかもしれないが、それは、違う。プロは、そんな怪しげな方法を選択しない。

   プロは、もっと、確実で合理的な方法を選択するものである。誰にでもある傾向。つまり、人間の生理的欲求の傾向に照準を合わせるのが、確実であり、合理的である。

   自らの傾向を分析し、利用する。どうすれば、どういう結果が得られるかを、冷静に考えるやり方が、プロの方法論である。
   
   ことを、やたら難しく考え、情緒的に行動すると、いかにも、それらしく、芸術家っぽいが、制作の神様は、そんなに甘くない。こちらが、相当、クールに仕事しないと、太刀打ちできない。

   どういう考え方をすべきか、どう実行すべきか、考えよ!  単純で、確実で、合理的的なものこそ、プロの道と、知れ。
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