隣の駅の船橋から、親子が教室に訪ねて来たことがあります。母親と小学2年生の女の子です。教室は終わったばかりで、誰もいません。
娘にデッサンを指導してほしいとのこと。どうやら、母親は大人と同じように教えてほしいようです。時々、こういうお願いをする親御さんがいるので、困ります。絵の基本がデッサンなら、小さいうちから、デッサンをさせれば、早く上手くなると思っているようです。
これは、違います。確かに、早くから基本を教えた方が、良い習い事もありそうです。 でも絵は違います。違うと、母親に言いました。理由も説明しましたが、納得しません。大抵の親御さんはここで、解かってくれますが。
私が、違うという理由には色々ありますが、大人と子供では絵の基本が違うのが、一番大きな理由でしょう。デッサンは技術ということになり、成長期の子供に教える技術ではないということです。
絵の世界での成長期は、おおよそ12歳ぐらい。小学6年生ぐらいです。成長期の子供は、独創性、発想、個性、感性など、小さいほど豊かです。大人が、喉から手が出るほどほしいものを、ズラリと持っているのが、この時期の子供たちです。
やがて、常識や知識が増え、この要素を侵食します。大人になる頃には、皆、ほどほどの量になってしまいます。それで、成長期にこれらの要素をできるだけ、伸ばすことが、この時期の子供の絵の基本ということになります。技術なんてものは、いらないんです。
さて、この母親はなぜ、納得しないんでしょう。娘の意思ではないことは明らかです。どうでもいいような顔して座ってます。
私が思うに、他の子より少しでも上手くが狙いでしょう。この親だって、成長期の子供の食べ物には、気を使っているはずです。絵だって同じです。バランス良くです。偏食はいけないのです。
愚かな母親の見栄が、自分の子供の可能性を全部摘み取ろうとしています。デッサンしか出来ない子を作り上げようとしてます。
この母親は、いかにも不満気に帰って行きました。もしかして、この母親の願いがかない、「デッサン少女」が誕生したら、それは、絵の世界の怖い怪物の名前なんです。
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