|
|
プロフィール |
Author:田屋優
「絵の多角的分析」を研究テーマに、様々な角度から見た絵の本質を分析解説する。 画家・彫刻家、田谷映周を師匠とし、兄弟弟子に画家・彫刻家、田谷安都子。 自身の弟子に橋崎弘昭、大野まみ、萩原正子。 「西船絵画教室アート21 アート21研究所」 http://www.art21japan.jp/
南船橋ビビットスクエア・カルチャースクール絵画部講師、ウエルピア市川絵画部講師、カーサ・デ・かんぽ浦安絵画部講師、NONSTOP会員。
|
|
最近の記事 |
|
|
カテゴリー |
|
|
カレンダー |
06
| 2015/07 |
08
日 |
月 |
火 |
水 |
木 |
金 |
土 |
- |
- |
- |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
15 |
16 |
17 |
18 |
19 |
20 |
21 |
22 |
23 |
24 |
25 |
26 |
27 |
28 |
29 |
30 |
31 |
- |
|
|
最近のコメント |
|
|
FC2カウンター |
|
|
FC2ブログランキング |
|
|
ブログ内検索 |
|
|
RSSフィード |
|
|
|
|
 会員 木下瑞穂 油彩画
「教室日記」 (作者作品紹介―4)
作者作品紹介4回目は、木下瑞穂さんの油彩画である。
木下さんは、長いこと水彩画を描いてきた。 先にご紹介の坂元さんと同じ頃に入会。 やはり、古参の会員だが、まだ、20代。 色々とチャレンジしたいのだろう、 2012年11月に水彩画から油彩画に転向した。
水彩画の時と同じように、初めは模写から入り、今回初めて写真から絵を起こした。 倉敷の景色である。
油彩画で、初めて写真から絵を描くには、色々問題が起こる。 倉敷の川辺の商家は、余りにも日本的な景色なため、油絵制作には、そもそも向かないという問題。
人が、油彩画をどうイメージしているのか、分からないが見当はつく。 おそらく、19世紀の後期印象派辺りを油彩画として、イメージしていることだろう。 ゴッホ・ルノワール・セザンヌあたり。 ルネッサンス以降の写実的な描き方と、印象派の描き方はそもそも違う。 16世紀のルネッサンス期の描き方は、正確な輪郭線を描き、それから着色していく。 まず、輪郭線に重要な役割がある。 一に輪郭線、二に着色の順番は、16世紀・17世紀・18世紀を通して、絵の当然の描き方として発展していくが、19世紀初頭の画家であるドラクロワが、この輪郭線を壊してしまった。
非難ごうごうであったことは、察するに余りあるが、以後、輪郭線の重要性が薄れていったことは確かだった。 こうして、印象派へと突入し、絵の描き方そのものが変化したが、その描き方が現在の洋画の基本的な描き方として定着している。 つまり、描き方において、少なくとも日本の洋画界では、印象派以降の描き方が洋画の描き方としている。
その描き方が、日本の風土や景色と馴染まないのである。 線が細過ぎる。 繊細過ぎる。 など、洋画のどっしりとした骨太の景色が日本の場合、非常に少ない。
有名な倉敷の川辺の景色は、私も訪れたことがあるが、しっとりとして歴史を感じる場所である。 ここを油絵で描いてみたいと思っても何ら不思議はないだろう。
ただ、あまりにも日本的な景色であるため、描くとなると、描き方の選択肢はあまりない。 印象派以前の輪郭線重視の描き方か、印象派、特に後期印象派以降の描写重視の骨太の描き方かの二つになる。
油絵発展途上の木下さんには、描写重視の描き方は荷が重い。 したがって、輪郭線から入るしかない。 ただ、そうなると、どこまで、景色の輪郭線を描き込むかという問題が起こる。 この場合の景色とは、画面の半分を占める建物の景色のことである。
屋根瓦の向きにしろ、窓の格子にしろ、一つをキチッと描くと、後は、それに右へならいして、全てをキチッと描くハメになる。 輪郭線を選択すると、そういう面倒が待ち受けている。
木下さんは、透視に気を使いながら、屋根瓦の向きを丹念に描き込んだ。 時間は掛かるが、後々のためには、止むを得ない。
しかし、それが、功を奏して、キチッとした商家の景色が出来上がった。 ここが一つのポイントだった。 抑えるところを抑えれば、あとはラフに描いても、なんとかなるもの。
それで、下半分が、いわゆる油絵の描き方になった。 それほど、細かくは描いていない。 ただ、細かく描いてないだけで、荒いのとは違う。 船に当たる光の加減、水への映り込み、波の描き込み方等、細部に亘って、細かい神経が払われている。
かくして、繊細さとラフさが融合した倉敷の景色が出来上がった。
絵の描き方のルールは、実にシンプル。 たった一つ。
「画面上に気になるところを作らない」
これだけである。
主題があり、それを支える脇役がある。 それらを効率よく鑑賞してもらうためには、余計なものは排除しなければならない。 画面上に気になるところを作らないわけだ。
今回の木下さんの絵の中には、無駄なものはない。 全てが必要であり、必要なものしか描かれてない。
絵をよくご覧頂けると分かると思うが、非常に細かいところまで、神経が行き届いている。 それなのに、景色から受ける印象は、とてものんびりとした情景である。
絵は、こういう風に描くもの。
そのことを感じ取ってもらえたら、ありがたい。
スポンサーサイト
|
|
|