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プロフィール |
Author:田屋優
「絵の多角的分析」を研究テーマに、様々な角度から見た絵の本質を分析解説する。 画家・彫刻家、田谷映周を師匠とし、兄弟弟子に画家・彫刻家、田谷安都子。 自身の弟子に橋崎弘昭、大野まみ、萩原正子。 「西船絵画教室アート21 アート21研究所」 http://www.art21japan.jp/
南船橋ビビットスクエア・カルチャースクール絵画部講師、ウエルピア市川絵画部講師、カーサ・デ・かんぽ浦安絵画部講師、NONSTOP会員。
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アート講義(番外編・総合) ‘11/07/26(火) |
<絵の制作における基本的な感覚について> 連続3回目のアート講義である。 今回のテーマは、「絵の制作における基本的な感覚について」 基本的な感覚とは、画面上の微妙な変化を肌で感じるという話である。 別に難しい話ではない。 極、当たり前の感覚的な話。
音楽をする者が、音楽理論とか、楽譜の勉強とかする前に、音感やリズム感に問題があっては、不味かろう。 音感やリズム感は持って生まれたものなので、鍛えようがないと思うが、幸いにも絵に対する基本的な感覚は、普通であれば鍛えて何とかなる。 絵の感覚は磨くことができるので、これからの話は、ほとんどの方に当てはまる。 そういう話である。
ある人が、油絵を描きたいと思ったと仮定しよう。 こう描きたいという想いが心の中に湧き上がる。 油絵の道具を取り出し、準備し、キャンバスに絵具を塗り始める。 頭の中は、これから描こうとする絵のことで一杯になる。 上手く描けないとか、上手くいったとか、思いながら作業を進める。
仮に、メデタク何とか描き上げたとしよう。 そこで、初めに戻って、全工程を眺めてみると、描きたいと思う衝動があり、衝動は動機となり、目的となって描き始め、紆余曲折しながらゴールしたことになる。 もっと、簡単に言うと、動機・描写・完成。 一つの「想い」が発生し、形作られ、形になる。
絵の制作の良くあるパターンであるが、この工程に感覚を投入するとどうなるか?
すると、話をシンプルにまとめるわけにはいかなくなる。 その時々に感じたこと、感覚の話になるので、当然、話がもっと細かくなる。 その時々に感じることは、一つではない。 ほとんど全て違うことを感じながら作業して行くと言って良いので、一つ一つ書き出したのでは、話が長過ぎてしまうし、そこまでやることの意義は薄かろう。 そこで、ある部分だけ拡大してみよう。 どれだけ感じながら作業しているか、部分を知ることで、全体をイメージする。 この手で行く。
まず、絵を描いた「ある人」のレベルだが、結構、経験的にも絵が描ける人にしようと思う。 中級者・40代男性。 ある程度経験があり、ある程度感じるレベルでないと話が進まないから。
ということで、切り取る場所は、「絵の描き始め」の段階。 絵の描き始めの段階は、不安と期待が交差する神経質なところなので、面白い。
では始める。
顔だけの絵を描きたい。 ボーとそこにあるが、なぜか存在感のある絵である。 急に頭に浮かんだ。
ウルトラマリンブルーで顔の輪郭をとる。 青で輪郭をとろうとしたのは、たぶんイメージが、亡霊のような青い顔だからかもしれない。 やはり、青がきつい。 ホワイトをパレットに出し、ウルトラマリンブルーを薄める。 ウルトラマリンブルーでは濃すぎてイメージが湧かない。
目に当たるところ、鼻に当たるところにそれぞれヨコ線、タテ線を入れる。 髪の毛は筆に付いた絵具で擦るだけ、ハッキリ描かない。 セルリアンブルーを出し、顔を補足する。 塗るというより、擦って顔の凹凸を表現する。 顔の目の部分や鼻など、影になりやすい箇所に、アクセントとしてウルトラマリンブルーを塗る。
ほぼ下塗り完了。 ここまでは、良い感じ。
F8サイズをタテにして、顔を画面いっぱいに描いた。 バックはとりあえず黒。 次の色が難しい。 頭に浮かんだ映像には、色がない。 薄い青で描き出したのは、正解。 バックの黒も良い。 次の色はやはり白か。 白で行こう。
白を顔の額や、頬の所に塗ってみる。 どうも違う。 なぜだ? ニューギニアの原住民が顔に白い色で化粧するが、そんな感じになってしまった。 青の下書きではダメということか?
初めから白で塗ってみるか。 バックは黒だな。
ペインテイングナイフで、画面の色を削り取る。 テッシュで拭き取る。 画面は、青と白と黒とが薄く混ざったような不思議な雰囲気になる。 この雰囲気は良い感じだな。 こんな感じのイメージだったよな。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・以下略。
と、ここまでにしよう。
お分かりのように、画面と向き合い、画面と相談している様子が伺える。 画面上の微妙な変化を肌で感じながら、作業をしているからである。 当たり前のことであり、だれでも、このように描き進めるが、この人の良いところは、初めの方針を大幅に変更するところにある。 これは、大事なことで、大幅に変更することによって、イメージを再確認しようと試みている。
頭に浮かんだ映像で描き出した絵は、イメージが全てである。 イメージを失ったら、それ以上絵を描くのは困難を極める。 そのため、画面上の微妙な変化にも神経質になり、何度も修正を繰り返す。 画面上から感じるものがなくなったら、修正し、イメージを追いかける。
今回のテーマである「絵の制作における基本的な感覚」とは、この感覚を指している。 描きながら感じ、感じながら描く基本的な感覚。 絵の制作においては、この感覚が全てである。 構図とか配置・配色とかは、この感覚によって支えられている。 まず、感じないと構図を語っても意味がない。 絵の勉強には色々あるが、この基本的な感覚を磨いてないと、出来上がった絵の良し悪しは、想像が付く。
では、この感覚の磨き方はというと、実は非常に簡単である。 それは、絵をたくさん失敗すること。 これに尽きる。
「なあ~だ」と思う人がいるかもしれないが、これは本当の話。 人は、失敗から学ぶ。 失敗はショックが大きい。 それで、知恵が付くし感覚も磨かれる。
私が生徒さんたちより絵の知識があり、ワザもあり、感覚も良いとしたら、それは、人に負けないほどの失敗を繰り返しているからに他ならない。 今でもその修行に余念がないし、失敗は日常茶飯事である。 珠玉の感覚は、磨きっぱなし。
ということで、これが、絵の基本的な感覚の話。 感じながら描き、描きながら感じる。 これを繰り返す。 そうすることが絵を豊かにする。 感覚は失敗することで磨かれる。
いかがでしょうか? こういう話なら、皆さんも付いて来れるのでは?
田屋のアート講義は、‘09/4/23(木)を以って終了しました。
「研究所レベル」・「大人コース(中・上級)レベル」・「大人コース(初級)レベル」・「キッズコース」・「高齢者のための絵画指導」の五講義(各60テーマ)は、左欄のカテゴリーで、閲覧出来ます。
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